2019年になりました。新年明けましておめでとうございます。
2018年は、296件のボカロ関連ニュースを取り上げました。週刊ボカフロならではのニュースの視点から、2018年のボカロを振り返りたいと思います。
この記事では、2018年のボカロを象徴する10大ニュースを紹介しながら、2018年を振り返ります。
それでは早速、週刊ボカフロが選んだ2018年のボカロ10大ニュースを紹介していきます。
まずは、ここで10大ニュースの一覧を紹介します。この一覧から詳細に飛ぶこともできます。
- 重音テトが10周年を迎える
- VOCALOID5が発売される
- IAの英語版CeVIOソングライブラリ「IA ENGLISH C」が発売される
- 歌声合成にAI技術を適用した事例が登場
- 初音ミクの様々なアーティストとの共演や異ジャンルコラボが続く:人間の歌手やラッパー、ジャズバンド、vTuberとの共演、流行歌カバーなど
- 初音ミクが喋るコラボ企画が続く:スマートスピーカーやAIアシスタント、アニメなど
- 琴葉茜・葵が出演する「歌うボイスロイド」のファンメイドライブが開催された
- 各地でファンメイドのボカロライブが活発に開かれる
- ヨーロッパで日本語ボカロのライブコンサートが行われる:初音ミクのヨーロッパ・ツアー、IAのスペイン・マドリード2日間公演など
- 中国ボカロ洛天依が中国のTVにARで出演する事例が増える
以下、それぞれのニュースの詳細を紹介していきます。
重音テトが10周年を迎える
フリーソフトウェアの歌声合成ソフトとして、飴屋さんが開発した UTAU があります。このUTAUも今年の3月6日に公開から10周年を迎えたのですが、このUTAUで有名な音声ライブラリの1つが重音テトです。
重音テトは2008年4月1日のエイプリルフールに、架空のボーカロイドという嘘のために作られたキャラクターですが、その後、UTAUの音声ライブラリーとして作成され、ユーザー初の音源キャラクターながら、商業CDやねんどろいどなどの商業展開がされたりしています。
そんな重音テトが10周年を迎え、10周年記念ロゴ作成や音楽イベントTETOFES開催、初音ミクシンフォニーへの出演などの展開がありました。これまでの重音テトの10年間の活動の集大成となったと思います。
VOCALOID5が発売される
今年7月にヤマハから新しいVOCALOID5が発売されました。事前の発表はなく、発表当日からダウンロード販売を開始するという急展開でした。プリセットのフレーズ・歌唱スタイルをドラッグ&ドロップで使える新しいインターフェイスや、男女×日英の4つの新しいボイスバンク(歌声ライブラリ)提供などが、VOCALOID5で提供されました。
ヤマハ以外の企業からはVOCALOID5用ボイスバンクとして、AHSから声優・井上喜久子さんを起用した「桜乃そら(はるのそら)」が発売されました。
VOCALOID5発売後、ネットレーベルのトラックメーカーがVOCALOID5に挑戦するネット番組が公開されるなど、従来のユーザー層とは異なる層へのPRが行われています。今まで使っていなかった層にもVOCALOIDを広げることができるのか注目したいところです。
IAの英語版CeVIOソングライブラリ「IA ENGLISH C」が発売される
IAは、VOCALOID3の歌声ライブラリと、CeVIOのトークライブラリが発売されていますが、英語で歌うCeVIOソングライブラリが発売されました。
歌声合成ソフトがVOCALOIDとCeVIOの2つの歌声合成エンジンで発売されるという珍しい展開になりました。またCeVIOにとっても初めての英語で歌うソングライブラリです。
IAは、海外でのライブ公演やイベント参加など、公式が海外展開を積極的に進めており、IAの英語歌唱ライブラリは、海外のファンにとって嬉しい展開だったのではないでしょうか。
歌声合成にAI技術を適用した事例が登場
ディープラーニングと呼ばれるAI技術を適用して、これまでより人間に近い歌声を再現する事例が出てきました。SinsyやCeVIOを研究開発しているテクノスピーチと名古屋工業大学が共同開発して発表した歌声合成技術や、マイクロソフトの女子高生AIりんなの歌声が、その事例です。
いずれも技術デモであり、製品化は先の話のようですが、いわゆる「神調教」と呼ばれるような職人技がなくても、人間の歌声と区別が付かない程の歌声合成が実現できる可能性が示されました。
初音ミクの様々なアーティストとの共演や異ジャンルコラボが続く:人間の歌手やラッパー、ジャズバンド、vTuberとの共演、流行歌カバーなど
vocafro.hatenablog.comこれまでも初音ミクは、和太鼓集団鼓童やオーケストラ、歌舞伎など、異ジャンルとのコラボレーションを行っていましたが、今年はそれだけでなく、さらに様々なコラボがありました。
象徴的なのが、9月に大阪新歌舞伎座で行われたライブショー「TGC SuperLive -MATSURI-」で、歌手のメイリアさん(GARNiDELiA)やDream Amiさん、Vtuberのキズナアイさんと歌で共演、ラッパーのSKY-HIさんとラップで共演しました。
11月には、イベント「東京150周年祭」にて、東京が生まれたから150年の間に歌われた、東京にまつわる流行歌39曲を初音ミクがカバーして歌いました。
同じく11月には、音楽イベント 「かわさきジャズ2018」でジャズピアニスト佐藤允彦さん率いるジャズバンドと初音ミク、そして2019年に10周年を迎える巡音ルカが共演し、ジャズのスタンダードやボカロ曲を演奏しました。
今後も、ボカロの可能性を広げるような、様々なアーティストやジャンルとのコラボレーションが楽しみです。
初音ミクが喋るコラボ企画が続く:スマートスピーカーやAIアシスタント、アニメなど
歌うソフトウェアである初音ミクですが、最近は喋るコラボ企画が目立ってきています。これまでも、ライブのMCなどで喋ることがありましたが、喋りがメインのコラボ企画が増えてきました。
その代表例が、Amazon Alexaのスキル「Hey MIKU!」や、Googleアシスタントのアプリ「初音ミクトーク」です。どちらも、音声で初音ミクとの簡単な会話ができるものになっています。また、歌う機能も付いています。
またアニメ「シンカリオン」では、初音ミクが歌手ではなく、声優として出演しています。喋るだけでなく叫びなどの表現にも挑戦しました。なお、このアニメのメインターゲットは小学生くらいの子供向けということで、新しい層への初音ミクのPR効果もあるのかもしれません。
これらの企画での初音ミクの喋りは、初音ミクの開発者である佐々木渉さんが調声しているようです。これらの企画の成果は、今後の初音ミク製品に活用される事を期待したいです。
琴葉茜・葵が出演する「歌うボイスロイド」のファンメイドライブが開催された
VOICEROIDは本来トークソフトで、VOCALOIDのような歌う機能は無いのですが、近年 KotonoSync などVOICEROIDに歌わせるためのツールやノウハウが蓄積され、VOICEROIDに歌わせた動画がニコニコ動画にいくつも投稿されています。そんな動画には「歌うボイスロイド」タグが付けられています。
そんな「歌うボイスロイド」による楽曲を使ったファンメイドのライブが初めて開催されました。ファンメイドライブのための資金がクラウドファンディングで集められたのも目新しいところです。
そのライブで歌ったのは琴葉茜・葵ですが、琴葉茜・葵にとって2018年は躍進の年でもありました。琴葉茜が歌う「何でも言うことを聞いてくれるアカネチャン」が音楽ゲームに収録されたり、MMD杯ZEROのゲスト審査員に選ばれたり、超パーティーに出演したりするなど、活躍の場が広がっています。
ユーザーの創作も盛り上がっており、琴葉姉妹の動画コンテストには100件以上の作品が寄せられ、クリスマスにはファンメイドのトーク&ライブショー「琴葉メリークリスマス」も開催されています。
琴葉姉妹の活躍はまだまだ続きそうです。
各地でファンメイドのボカロライブが活発に開かれる
これまでも、初音ミクなどボカロのファンメイドライブが行われる事はありましたが、特に今年はこれまでより増えたように感じます。特に目立ったのが、学生主催で学園祭などで開催されるケースです。
上記の記事で紹介した3大学以外にも、北海道大学ボーカロイド同好会や電気通信大学バーチャルライブ研究会、Tokyo NIGHT Mikulive、佐賀県鳥栖市MIKU Crossing♪、富士山ミクライブ!などのファンメイドライブがありました。
ここまでは国内事例ですが、海外でもベトナムのサークルVocaleekやカナダのVocapartyなど、ファンメイドのボカロライブの事例がありました。これ以外にも、週刊ボカフロで紹介できていないボカロライブが国内外問わずあると思われます。
このようなファンメイドのボカロライブは、今後も続けられていくと思われます。
ヨーロッパで日本語ボカロのライブコンサートが行われる:初音ミクのヨーロッパ・ツアー、IAのスペイン・マドリード2日間公演など
初音ミクが、フランス・パリ、ドイツ・ケルン、イギリス・ロンドンの3年を回るヨーロッパ公演ツアーを開催しました。初音ミクは、中国・台湾・マレーシアなどのアジア地域、カナダ・アメリカ・メキシコの北米地域での海外公演はありましたが、ヨーロッパでのライブコンサートは初めての事になります。
なお、初音ミクと同様に海外での公演を行っているIAも、初音ミクのヨーロッパ公演ツアーより前の今年4月にスペイン・マドリードでの2日間4公演や、6月にフランス「デジタルアートデスティバル」内の公演と、ヨーロッパ地域で初めてのライブ公演を行っています。
海外公演に関して、珍しい形でのライブコンサートとしては、ボカロPのピノキオピーが初音ミクと共演する形で、中央アジア・カザフスタンの音楽イベントに出演しています。
今後も、様々な形でボカロの海外公演が広がっていくのでしょう。
中国ボカロ洛天依が中国のTV番組にARで出演する事例が増える
洛天依はこれまでも何度か中国の歌番組などに出演したことがありましたが、2018年は少なくとも3回はARを使って出演しており、出演が増えているようです。
上記の年越し番組の事例以外には、中国国営テレビの人気歌番組に京劇役者と共演したり、江蘇テレビの歌番組で男性歌手の周華健さんと共演したりしています。
このような一般の歌番組への出演は、日本では初音ミクでも滅多にない事なので、TVに歌手としてボカロが出演する点では、中国は日本の先を行っているように見えます。
なお洛天依は、中国で商業コラボを多く行っているようで、中国ミリンダや維他VITA、中国ネスカフェとのコラボ商品やCMが出ています。
まとめ
以上、週刊ボカフロが選んだ2018年ボカロ10大ニュースを紹介しました。
2018年の数多くのニュースから10件選ぶのは悩ましい作業なのですが、いつも週刊ボカフロがニュースを選ぶときの基準である、ボカロなど音声合成とそのキャラクターの広がりの視点から、重要と思われるニュースを選びました。それでも選ぶのが難しく、複数のニュースを1つにまとめたりもしました。
結果的に、アニバーサリー、新しい音源や技術、初音ミクのコラボ企画、ファンメイドイベントの動向、海外動向と、週刊ボカフロらしい視点でバランス良く選ぶ事ができたかなと思います。
皆さんにとって、2018年の重要なニュースは何でしたでしょうか?
2018年ボカロ10大ニュースを、2017年に選んだボカロ重大ニュースと比べると、2017年の延長にあるニュースもあれば、新しい動向のニュースもあります。
例えば、初音ミクの様々なアーティストとの共演や異ジャンルコラボや、中国ボカロ洛天依が中国のTVにARで出演する事例は、2017年からの延長で、活動がさらに広がった動向です。一方で、歌声合成にAI技術を適用した事例や、「歌うボイスロイド」のファンメイドライブは、2018年以前にも兆候はあったと思いますが、2018年になって目立ってきた新しい動向と考えます。
この事は、音声合成とそのキャラクターの世界が、2018年もさらに広がった事を示しているように思えます。
2019年もこのような広がりがある事、そしてそんなニュースを、この週刊ボカフロで皆さんに届けられたらと思います。